第30回日本産業衛生学会全国協議会

ポスター発表要項の企画意図について

  • 運営副委員長(ポスター担当)黒﨑 靖嘉
  • 企画運営委員長小田原 努

 全国協議会での一般演題発表は通例として口述発表ではなくポスター発表にて実施されてきました。今回の全国協議会を実地開催からオンライン開催に切り替えるにあたり、今回の一般演題発表についてどの様な形式で行う事が適当か、運営委員の中で議論を重ねました。その結果、「ポスター発表で実施」する事とし、ポスターの作成要項として「ポスターはスライド形式(PowerPoint)で9枚まで(表紙含む)」「音声・アニメーション・動画は使用不可」という内容としました。

 このポスター作成要項を公開したところ、「ポスター発表ならば一枚の大きな用紙にレイアウトするものだろう」「スライド形式ならば口述発表と変わらないではないか」といった御意見を頂きました。つきましては今回の作成要項を決定するに至った経緯を説明いたします。

オンライン開催での実施について

 本会を実地開催からオンライン開催に切り替えるにあたり、運営方針として掲げたのは「実地開催でのやり方にこだわらない」事でした。会の骨格(どの様な企画を行うか等)については実地開催を参考にするが、実地開催と同じ事をしようとし過ぎる事で参加者の皆さんに不便を感じさせてはいけないと考えました。つまり「オンライン開催にふさわしいやり方を考えよう」という事です。

ポスター発表とは何か

 その様な方針の上で一般演題発表について検討を行うにあたり、まず我々が考えたのは「ポスター発表とは何か」「ポスター発表と口述発表の違いは何か」でした。我々はこの様に考えました。

  • ポスター発表:「資料(ポスター)」が主役であり、「演者の発表」はそのサポート
  • 口述発表:「演者の発表」が主役であり、「資料(スライド)」はそのサポート

 口述発表は演者の発表とスライドが必ず対となります。つまり資料(スライド)だけでは研究発表としては成立せず、「演者の発表」が必須であると考えます。これに対し、ポスター発表はコアタイム以外には演者不在の事の方が多いのですから、ポスターのみで研究発表として成立しないといけません。つまり資料の作成方針として、口述発表とポスター発表は全く異なるものであります。

 この「資料のみで研究発表として成立する」事を意識して作成するのであれば、資料の形式がスライド形式であろうが一枚用紙形式であろうが「ポスター」として成立すると考えました。

 「音声・アニメーション・動画は使用不可」としたのは、実地開催を踏襲したものです。これについても色々な意見があったのですが、「音声を入れたらそれこそ口述発表を変わらなくなってしまう」と考え、あえて制限を設けました。これは現時点における制限であり、今後様々な考え方が出てきてしかるべきだと考えています。

オンライン開催における資料の視聴環境について

 学会での研究発表とはただ発表すれば良いというものではありません。自分の研究発表を参加者に見て頂き、議論を重ね、より良い活動に繋げていく事が肝要です。これは開催方式に関わらずブレさせてはいけない軸だと考えました。ではこれをオンライン開催で実現するにはどうしたらよいか。

 「議論を重ね」については、オンライン会議システム(Zoom)を利用する事で、実地開催と同様にコアタイムを設ける事としました。これにより、演者と参加者がリアルタイムで議論を行える様にしました(他の方法についても検討中です)。

 最も悩んだのが「自分の研究発表を参加者に見て頂き」の部分です。ポスター発表の際にはポスター単体でも自分の研究発表を理解してもらえる様、レイアウトにも工夫する必要があります。事実、産業医部会・産業看護部会のポスター発表優秀賞では評価基準として「デザイン・レイアウト」の項目がある事を伺っています。

 実地開催であれば、一辺1〜2メートルの広いキャンバスでも一目で全体を見渡す事ができます。なので、大きな一枚用紙に自由にレイアウトして頂いた方が、参加者も研究内容を把握しやすくなるだろうと思います。

 しかし今回はオンライン開催です。スマートフォンから大サイズのモニターまで、様々なモニターサイズがあり、しかも実地に比べれば一目で確認できる情報量が圧倒的に少ない。この様な視聴環境の中で研究発表を行って頂くにあたり、ポスター作成要項として何に注目すべきか。

 我々が最も重要視したのは「参加者にとっての見やすさ」でした。参加者の皆さんに研究発表の内容そのものに集中して頂くためには、この「参加者にとっての見やすさ」をないがしろにするわけにはいかないと考えたのです。

 そうなると「様々な大きさのモニタで見ても、研究発表が理解しやすい」事がポイントとなってきます。つまり「一目で確認できる情報量の少なさ」を念頭に置いた作成要項でなければなりません。これに対応できるのは「一枚用紙形式」ではなく「スライド形式」であると我々は判断しました。

 「デジタルなのだから、一枚用紙を拡大・縮小して見ればいいではないか」という意見もあるかと存じます。しかし実際にやってみて頂ければ分かりますが、一枚用紙を拡大・縮小し、見たい場所に視野を移動させるというのは非常にわずらわしいものです(例えると、双眼鏡で風景のあちこちを見る様なものです)。参加者に「操作」ではなく「研究発表」そのものに集中して頂くためには、今回に関して言えば「一枚用紙形式」は相応しくないと判断しました。

まとめ

 我々は「ポスター発表とは何か」「オンサイン開催の視聴環境に相応しいポスター形式とは何か」を考え、今回のデジタルポスターは「スライド形式」「音声・アニメーション・動画は使用不可」としました。もちろんこれは現時点での種々状況を踏まえて決定したもので、完全解ではありません。今回の協議会を参考にして頂き、今後のオンライン開催での研究発表のあり方を皆さんと考えていく事ができれば幸いです。

 最後に、一般演題を登録頂いた方々へ。今回は「演題登録段階でオンライン開催である事が明示」されている、初めての学会(協議会)です。色々不安はあるかと存じますが、それにも関わらず演題をご登録頂き本当にありがとうございます。

 産業医部会・産業看護部会のポスター発表優秀賞の選定にあたり、両部会には上記企画意図を説明し、「デザイン・レイアウト」については「デジタルポスターとして」という点に注目してご評価頂きたい旨をお伝えしております。資料作成にあたってはこの点にもご留意の上で作成頂きたく存じます。

 演者や参加者の皆様にとって実りの多い会となるべく準備を進めておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。